1999年に栃木県の日本語教室担当者に対してアンケートを実施した。その結果、先生方が一番必要としているは、対訳つきの教科教材であることが分かった。
3.教材についてお聞きします。
(1)主教材は何を使っていますか.
『ひろこさんのたのしいにほんご』(凡人社) 14名
『にほんごをまなぼう』(ぎょうせい) 7名
低学年の国語の教科書(光村図書) 4名
『初級日本語』(東京外国語大学留学生日本語教育センター) 1名
『日本語初歩練習帳』(日本語国際センター) 1名
『新日本語の基礎1』(スリーエーネットワーク) 1名
『日本語教室』(波多野ファミリースクール) 1名
市教育委員会から支給された教材 1名
国語ドリル,算数ドリル 1名 他
ほとんどの担当者が『ひろこさんのたのしいにほんご』か『にほんごをまなぼう』を使っている.初級レベルを卒業すると低学年用の国語の教科書やドリル,書き込み用プリントなど習得段階に応じていろいろな教材を使っているようである.
(2)上記の教材を使ってみての感想,要望,改善点などをお書きください.
『ひろこさんのたのしいにほんご』 教科書,ノート,絵カードがセットであるので,日本語の初期指導が大変効果的にできる. 体系的な配列なので,子どもの習得段階を把握しやすい. 4技能の学習が平行して進められる. 文字,文型,発音など総合的な学習に役立つ. 絵が多く,子ども向けの教材. 母語保持の観点から母語を書く欄があると良い.
小学校低学年レベルの語彙や言い回しは中学生の発達段階には合わない. 漢字は学年別の系統性がないため,学級における漢字指導と重なる部分が少ない. 母語との対訳が欲しい .(19) 基本語彙の見直しをして欲しい. 児童にとってはつまらないようである.
『にほんごをまなぼう』 初期段階ではもっと細かい指導段階に分けた方がよい. 『日本語学級1,2』 来日したばかりの児童にとって実践的で役にたつ教材. イラストが多く楽しい.
(3)副教材としてどんなものを使っていますか.
(4)副教材として使っているものの中で,特に役立っているものがあれば,挙げてください.また,その活用法も教えてください. (具体的にお願いします)
副教材として様々なものがあがったが,ここでは特に役にたっているという指摘のあったものを挙げておく.
・カード類 公文式漢字カード,ことばカード,ひらがなカード,カタカナカード,反対ことばカード,等 ひらがなかるた,漢字かるた
・パソコンソフト 「ことばの森1~6年」「学ぶくん」「カルロといっしょにあいうえお」「算数ランチBOX」
・『ひろこさんのたのしいにほんご』の練習帳
・『日本語かな入門』(母語の説明がついているので)
・『子どものための5か国語絵単語帳 これってなあに』『子どものための5か国語絵単語帳 どこいくの』(全く日本語の分からない児童との意志疎通に役立つ) 小学館の雑誌の付録 ・『にほんごをまなぼう 教師用指導書』についている語彙インデックス(20)
・書写の教科書,書写ノート(書く指導の時に有効)
・『うごきのことば,言語図鑑』五味太郎,偕成社(動詞の勉強を始め,いろいろ活用できる)
・手作りの教材 短文づくり(助詞のカードと短い句のカードを組み合わせて短文をつくる:助詞の使い方の練習) 自作のすごろく パウチカード(絵の裏に母語と日本語を対にして書く.作る過程も楽しい)
・「世界昔ばなし」(VTR)(ビデオを見た後,質問し答える練習 )
・インターネットでEメールのやりとり,ブラジルのホームページ閲覧,チャットコーナーでのおしゃべり(母語保持の一環として)
(5)こんな教材があったらいいなと思うものがあったら挙げてください.
・対訳付きの教材
もっとも要望が多く,特に各教科書の対訳に対する要望が多く寄せられた(21) 。これは教科理解とともに母語保持の観点からも強く実現が望まれている.
・スペイン語やポルトガル語の絵本(22)
・中学生の知的水準を満たすような教材 少数の基本的な語彙や簡単な文法を用いながら,内容的には中学生の発達段階に合った教材が欲しい.
・単語カード,文型カード,文例が表に印刷され,裏面には品詞や活用が書かれているカード. ユニークなカードの活用法としては,ひらがなカードを50 音順に並べてタイムを競う,ことばさがしゲーム(三枚のカードの中から2枚を使ってことばを作る)等が挙げられた.
・問題文が母語で書かれたドリル(学習内容は理解できても,問題文を読解する力がないので) 専門用語(約数,直方体など)が問題文にカッコ書きされているドリル
・テストの問題文の母語訳(点数がとれないために不勉強と思われたら問題である.)
・パソコンソフト,ビデオ,音声テープ(23) ・母語での手遊び歌(24)
・教材ではないが,学校行事や学級活動,入学時に際しての心得のようなもの(病気等以外では毎日登校すること等)がかかれているパンフレット(25)
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