こんな試験問題を出してはいけない

かつてのHP「TSNotebook」より 

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私が大学2年か3年の時だったと思う.

語学の試験にはよく日本語訳が出題された.ある年配の先生の試験問題(スペイン語購読)もそうで,たいていいつも授業で学んだテキストの範囲から日本語訳が出題された.つたない記憶によると,その時の試験範囲はかなり広く, 私は結構苦労して試験準備をした.

試験当日,教室に行くと,友人の一人が「私は今日の試験は完璧だ」という.「ためしにどこでもいいから,スペイン語で段落の出だしを言ってみて」というので,いくつか段落の出だしのスペイン語を読み上げると,2,3の単語を聞いただけで,彼女の口から完璧な日本語訳がすらすらと出てきたのである.

私はそのとき,彼女が勉強したのは,スペイン語ではなく,日本語なのだな,と思い,そういう勉強方法を密かに軽蔑した.

今にして思えば,責められるべきなのは彼女の方ではなく,そういう試験勉強をさせるような試験問題をだした教師の側なのだ,ということがよく分かる.彼女は日本語訳という試験問題に対して最も効果的な試験勉強をしたわけで,おそらく試験は満点に近かったろう.

私はそのこともあって,語学の試験問題にはできるだけ日本語訳は出題しないようにしている.

当時は試験問題のあり方などというものに先生方はほとんど重きをおいてなかったような気がする.それとも,先生方からすれば,私たちを落第させないためのやさしい配慮だったのだろうか.

あれから20年以上たって,大学における教師の教育力が厳しく問われるようになってきた.また,学生の気質も変わり,試験の前しか(試験のためにしか)勉強しない学生も増えている.試験の持つ意味はかつてないほど大きくなっているのである.

試験問題は,正しい学習の仕方を指し示すようなものでなければならない.試験の勉強をすることが即,その科目や学問の正しい勉強の仕方になっていなければならない.スペイン語の試験であれば,正しくスペイン語そのものを勉強するようなものでなければならないと思うのである.

(2001年4月14日)

TS日本語教室 いっしょに学ぼう!

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